HOME TREND 今までのレトロブームと平成レトロの大きな違い -憧れから懐かしさへ-

今までのレトロブームと平成レトロの大きな違い -憧れから懐かしさへ-

TREND 2024.04.22

タイムパフォーマンスや多様性、ワークライフバランスの重視、強い仲間思考が特徴と挙げられるz世代は、なぜ平成レトロに魅力を感じるのか?を解説していきます。

そもそもZ世代とは?

Z世代とは、1996年から2012年までとされる説が一般的であり、2024年現在11歳-28歳の層を指します。

一般的に、タイパ(タイムパフォーマンス)重視の効率主義、強い仲間思考、仕事よりプライベート重視、多様性を重んじるとされています。

そんなZ世代の消費行動で代表的なのが、「エモ消費」です。

エモ消費とは

エモ消費とは、「エモーショナル(emotional=感情的)」が語源だと言われていて、「エモい」は「ロジカルに説明できないが満たされる」、砕けた言い方をすれば「なんかいい」という意味を持ちます。その「精神的な満足感」に着目したのが「エモ消費」です。

今まで目的とされていた「モノ」「コト」が手段と化し、「エモい」という感情で心を満たすという精神価値を求める消費行動がこれから増えてくると言われています。

参考記事:若年層(Z世代)の「エモ消費」が増加中?!「エモ消費」とは何か、なぜ現代の若年層は「エモ消費」を行うのか、など事例と共に徹底解説

エモ消費は、「経験✖︎ハッピー✖️コミニュケーション」の三つの要素が必要だと言われています。

(1)「経験」があること:過去に経験したものや光景、シチュエーションに対して「そんなこともあったな」と共感する

2)「ハッピー」を感じること:もの・光景などに触れることで、小さな幸せを感じる

(3)「コミュニケーション」があること:自分で完結せず、誰かと幸せを分かち合う

そんな、「エモ消費」と相性がよく流行しているのが、「レトロブーム」です。

2010年代から、大正ブーム・昭和ブームと続き、今年2024年は「平成レトロブーム」が巻き起こっています。

参考記事:今注目のレトロブームとは?流行中の「昭和レトロ」「平成レトロ」「輸入レトロ」を食べ物・音楽・ファッション等の事例と共に徹底解説!!

最新の平成レトロ

▪音楽:ワンダイレクション

2011年のメジャーデビューから、日本を含む世界中でヒット曲を連発し、人気絶頂の中、15年の年末に活動を休止した英国出身の人気グループです。発売から10年近くたつ2024年にも、未だにストリーミング配信で聴かれ続けていると言います。

それらのリスナーは、中学高校時代にワン・ダイレクショに接触した経験を持っている層が圧倒的に多く、また歌詞ではなくメロディーに魅力を感じていることから、「懐かしい」という感覚からくる再ブームであると考えられます。

参考記事:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00971/00004/?i_cid=nbpnxr_index

▪ガジェット:デジタルカメラ

 

写真提供:@krnszur

数年前には、フィルムカメラのブームが巻き起こっていました。 その際は、スマホで一瞬で撮ることができる写真ではなく、「エモい」写真が撮れることに加えて撮影や印刷に手間がかかることに新鮮さから人気が出ていました。写真がスマホ一台でボタン一つで取れる時代だからこその流行であったと言えるでしょう。

今、デジタルカメラが人気となっている理由には、「懐かしさ」と「タイパ・コスパ」のバランスの良さがあると考えられます。

幼少期には一度目にしたことがあるモノであり、写真やカメラ自体のビジュアルに親しみを感じられること、そしてフィルムカメラほどお金と時間がかからないことがデジタルカメラがブームになっている理由であると言えるでしょう。

一台手に入れてしまえば、WiFIやアダプターを通して簡単にスマホにデータを移す事のできる「タイパ・コスパ」の良さは、懐かしくエモい物を求めつつも効率主義であるZ世代ならではと言えるでしょう。

参考記事:https://forbesjapan.com/articles/detail/66332

▪おもちゃ:たまごっち

1990年代に社会現象となった「たまごっち」の新シリーズ「たまごっちスマート」が2021年11月に発売されました。Z世代に人気のあのちゃんとKemioを起用したCMで話題となりました。

参照 :https://www.youtube.com/watch?v=U2Chp6iWT_k

そんなたまごっちは、おもちゃとしての小学生への再ブームもとは別に、ファッショントレンドとして今流行しています。海外でも、世界的トップモデル・ベラ・ハディットや、アメリカのラッパー歌手・コイ・リレイ、エイサップロッキーなどがたまごっちを取り入れたファションをしたことから話題となっています。

また、たまごっちの画像の画面部分に推しの写真を入れて、ステッカーにするという推したまごっちステッカーというモノも流行っており、様々な層からたまごっちが支持されていることが伺えます。

参考記事1:https://toyokeizai.net/articles/-/616819

参考記事2:https://www.oricon.co.jp/news/2257748/full/

参考記事3:https://youthclip.jp/tamagotchi_y2k/

▪ガチャガチャ:平成キャラクター大集合

ANGEL BLUE、DAISY LOVERS、たまごっち、ケースキーホルダー、一期一会、など、平成時代に学生時代を過ごした人なら一度は目にしたことがある平成のキャラクターたちのガチャガチャも多く販売されています。

参考記事:https://www.fashionsnap.com/article/2024-03-01/heisei-gacya/

▪SNS:平成ドラマ・映画の切り抜き

最近、『池袋ウエストゲートパーク』や『リリーシュシュの全て』『ごくせん』などといった2000年初期のドラマや映画の切り抜き動画がよくTikTokや、インスタグラムのストーリーでながれています。

現在放映されているテレビドラマでは、学生や若者がメインとなることが少なくなってきているのに比べて、若者にフォーカスされている平成時代のドラマは彼らにとって魅力的に思えるのではないでしょうか。

また、それらの多くには、日本語だけではなく英語や様々な言語でのコメントが寄せられていることから、平成・2000年初期ブームは日本のみならず世界中でのブームであると言えるのかもしれません。

平成レトロとは?昭和レトロブームとの違い

平成レトロは今までに流行した、大正・昭和レトロブームとは、全く違う性質を持つモノではないかと言えます。

昭和レトロや大正レトロは、実際にその時代を経験していない層が前の時代に対してノスタルジアを感じる現象でした。

それらに付随する感情はよく「懐かしさ」と表現されていましたが、あくまでそれは「新鮮さ」と自らが知らない古き良き時代への「憧れ」であったと考えられます。

それに対し、「平成レトロ」は実際幼少期に平成を体感していたZ世代の間で流行しています。 これはどういうことなのでしょうか?

Z世代が平成レトロに魅力されるのには、三つの要因があげられると考えられます。

1.「経験」「思い出」があり共感できること

実際の経験がない昭和レトロや大正レトロに比べて、実際に幼少期の体験があり「懐かしい」と自らの思い出を振り返れるという点に魅力を感じているのではないでしょうか。

2.他のレトロブームに差をつけるタイパ・コスパの良さ

フィルムカメラやレコードなど、昭和レトロはコスパとタイパが悪いのに比べて、平成レトロはその点に優れつつまた、エモさもあるというバランスの良さも流行の理由だと言えます。

3.平成が持つ、「ウチら文化」のパワーの懐古

ドラマの題材が若者である事が多かったりと、若者が時代を作っていた平成のパワフルさへの憧れをもっているのではないでしょうか。

参考記事:https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20230829-OYT1T50163/2/

なぜ懐かしさなのか?

「ノスタルジア」一昔前は、仕事に社会の荒波にもまれ疲れたサラリーマンが、自らの20代を思い出す時に多く使われていたような言葉です。

そんな言葉が、なぜ人生の最盛期とも言える10代・20代の流行を表すために使われているのでしょうか。

それには、二つの理由があるのではないかと考えます。

1、社会不安からの現実逃避

戦争やコロナ、という社会不安が煽られるような現象が多く起こる現代、未来に漠然とした不安を抱え過ごす若者が多くいるように見受けられます。

そんな中で、その瞬間に熱中できた平成初期、自らの幼少期にノスタルジアを感じる若者が多くいるのではないでしょうか。

2、情報量の増加による流行のサイクルの激化

また、ここ数年でのSNSやインターネットの爆発的な発達による、情報量の増加によって流行のスピードが早くなっていることによる影響もあると考えられます。

YouTubeショートやTikTokなど短い時間で楽しめるものが流行る現代で、個人が受け取る情報量は昔の何倍にも増加しています。

そんな中で、昔は60年ほどかけて受け取っていた情報量が、30年もしくは10年で受け取る事ができるようになったからこそ、令和になってから3~4年という短いスパンで平成レトロブームが流行っているとも言えるのではないでしょうか?

まとめ

いつの時代も昔を振り返るレトロブーム。

今回は、「平成レトロブーム」について取り上げました。明治時代にも江戸レトロブームがあったと言われています。

けれども、今回の「平成レトロブーム」には純粋な前時代への憧れという意味に限らず、Z世代が現代に感じている不安も強く関係しているように見受けられます。

アルファ世代が、10代20代となる頃には、どんなブームが来るのでしょうか?

<参考記事>

https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/generation_z

https://www.youtube.com/watch?v=xtCljLTO7Mg

https://www.shanon.co.jp/blog/entry/generation_z/

https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20230829-OYT1T50163/