HOME TREND 小さなバッグ流行の裏側にミニマリズム? 若者に必須のコスパ・タイパのファッションとは

小さなバッグ流行の裏側にミニマリズム? 若者に必須のコスパ・タイパのファッションとは

TREND 2024.07.10

以前の記事で、”What's in my bag?”というコンテンツについて流行の要因を探りました。

参考記事:カバンの中身を投稿するコンテンツ”What’s in my bag?”とは? ~流行の要因と心理を徹底分析~

 

ソーシャルメディアが普及する前から多くの人の生活の一部となりつつある現在まで、”What's in my bag?”コンテンツは発信者が多様化しつつ常に変化していることが分かりました。

ソーシャルメディア環境の普及に伴い、インフルエンサーマーケティングの発達や人々のコンテンツ消費習慣の変化により、”What's in my bag?”は、商品のPR的な役割を持つように変化し始め、身近なインフルエンサーの発信が伸びるようになっていました。

”What's in my bag?”は、手を伸ばしたら届きそうな距離感への憧れ、自分と社会の距離感などを確認するツールに成長しているのではないでしょうか。

今回は、”What's in my bag?”の流行の一因となる若者のバッグ事情に目を向けて見ましょう。

小さなバッグの流行

近頃、小さなバッグを持つ若者を街中で見かけることはないでしょうか。

何が入っているのか不思議に思ってしまうほどの小さなバッグを持つ人や、もはやカバンを持っておらず手ぶらで街を行く人も。

キャッシュレス化が大きく進み、財布のコンパクト化が進むなど、持ち物の変化が起こりました。ルイ・ヴィトンやロエベ、ミュウミュウなどのハイブランドがいち早く小さなバッグを打ち出したことで、人気に火がつきました。

そして、若者を中心に定番アイテムとして定着しつつあります。

小さなバッグの流行は個人の好みだけでなく、人々の潜在意識が影響していると考えます。

参考記事:https://kinarino.jp/cat1/46583

小さなバッグの流行には、ミニマリズムが関係

小さなバッグに流行には、「ミニマリズム」という価値観が関係していると考えられます。 ミニマリズムは、所有物を減らすことで幸福度を上げる自己啓発として、アメリカのエリート層の消費文化に対する反動から始まりました。

Netflixでドキュメンタリー化されたりと、世界で注目の価値観であると考えられます。

参考記事1:https://gendai.media/articles/-/106034?page=2

参考記事2:https://www.netflix.com/jp/title/81074662

日本にミニマリズムが普及した頃は、経済成長が乏しい時代だったこともあり、節約や節制などのお金の価値観が組み合わさって、一般に普及しました。

近年は従来のミニマリズムとは少し異なり、極端にモノを減らすような体系的なメソッドからは距離を置き、より気軽にファッションとして取り入れられるようになりました。

物質的な豊かさを簡単に手に入れることができるようになった現代社会において、物を持たない幸せ=身軽・自由であることへの幸せ、憧れを感じる若者が増えてきているのです。

参考記事1:https://gendai.media/articles/-/121078

参考記事2:https://toyokeizai.net/articles/-/632559

アイデンティティという言葉を耳にする機会が増えましたが、 人々は、「個性をもった主体的な自分が、社会的な自分、すなわち、社会の中で認められた地位、役割、職業、身分などの『~としての自分』という感覚に合致している安定感や安心感、自信」であるアイデンティティの感覚を求めているのです。ミニマリズムを生活に取り入れることよりも、ミニマリズムといった、ある程度社会で認められた価値観を個性として表現することに価値を見出しているのではないかと考えられます。

「ミニマリズムである私、イケてる」というような感覚で、小さいバッグを持つことが流行しているとも考えられます。

タイパとコスパを重視する若者たち

ミニマリズムな価値観を「合理的」と感じ、他人からの印象に左右されることなくミニマリズム的な生活スタイルを好む若者もいるのではないのでしょうか。

バッグを購入する際に、大きなバッグを選ぶよりも、必要最低限の物が入る小さなバッグを選ぶことで低価格で抑えることができます。でそれだけではなく、「あれがいるかも、これがいるかも」と思考する時間的なコストも抑えることができます。

ミニマリズムは、コスパ・タイパを重要視する若者にとって、合理的でスマートな価値観だと感じていると考えられます。小さいバッグに対しても、合理性やスマートさを見出しているのかもしれません。

必要最小限の物だけを持って小さいバッグで出かけることで、無駄な体力の消費やバッグの中で物を探す時間を削減し、スマートな振る舞いを見せたいという考えも感じられます。

参考記事:https://gendai.media/articles/-/121078

大きなバッグが流行した時代

現代では、持ち物を最小限に抑えた身軽な装いが格好良く捉えられることが多く、ファッションにとりこまれていますが、反対に物をたくさん持つことがイケていると思われていた時代もありました。

例えば、エルメスのバーキンが全盛期だった時代、バッグの中に荷物をごちゃごちゃっとたくさん詰めることが、かわいいとされました。

多くの人の憧れだったジェーン・バーキン自身も「女の子は何でもバッグに詰めるのが好き」とコメントしており、現代とは正反対のマキシマリスト的な価値観がファッションに落とし込まれていたように思います。

参考記事:https://www.vogue.co.jp/article/editorspick-gen-arai-jane-birkin

まとめ

ミニマリズムという価値観が社会的背景とともにファッションに落とし込まれた結果、若者は「ミニマルにまとまっている私」に価値を見出すようになり、小さなバッグが流行しました。

しかし、ファッションは社会の流れとともに変動するものです。

いずれはバーキンのような大きなバッグの人気が再燃し、「マキシマリストである私」をアピールするファッションや、”What’s in my bag?”で紹介されるバッグの中身も今よりもボリュームが増す日が再び訪れるかもしれません。