HOME MEDIA カバンの中身を投稿するコンテンツ”What’s in my bag?”とは? ~流行の要因と心理を徹底分析~

カバンの中身を投稿するコンテンツ”What’s in my bag?”とは? ~流行の要因と心理を徹底分析~

MEDIA 2024.05.13

What's in my bag?の流行

若者を中心に流行しているSNSコンテンツ「What's in my bag?」を知っていますか?

ファッション紙からインフルエンサーまで様々な媒体で投稿がなされており、どれも人気を博しているコンテンツです。

ELLE Japanの公式YouTubeでは34の動画が既に投稿されており、旬な俳優やアーティストたちがバックの中の私物を紹介しています。また現在、Instagramで#バッグの中身または#バックの中身 の投稿は25万件を超えます。

また日本だけでなく、西洋やアジアの他の国々でも若者に人気のコンテンツとなっており、中国の大手ソーシャル・カルチャー・サイト豆瓣(Douban)でもWhat's in my bag? (你的日常包里有什么?)が注目の話題となっており、現時点で閲覧数12,367 millionと 注目数(このトピックをフォローしている人数)21,552 views を集めています。

参考記事:https://www.douban.com/gallery/topic/4953/

What’s in my bag?が流行する心理とは

先日大谷選手の妻・真美子さんのZARAのバッグがメディアやSNSで話題となりました。世の中の反応からもわかるように、バッグは持ち主の人となりや生活を象徴しているように捉えられ、その中身を覗くことで持ち主の内面に迫るような、そんなドキドキ感があリます。

このエンターテインメント性を利用した”What’s in my bag?”のコンテンツは1990年〜2000年代前半から既に、若い女性向けの雑誌を中心にメディアで人気のコンテンツでした。

当時のコンテンツで、バッグの中身を見せていたのは、モデルや女優などの著名人で、読者にとって自分とは違う世界にいる人々の生活の一部や人となりを覗くことができる特別感があったように感じます。

媒体が紙からインターネットへと移行してもなお、”What’s in my bag?”を特集した記事や動画コンテンツがたくさん投稿されています。例えば、British Vogueの公式YouTubeアカウントでは2016年を皮切りに著名人たちのバッグの中身を紹介する”In The Bag”シリーズの動画が98本投稿されており、全体で1億近い視聴回数を集めています。British Vogueに限らず、様々な雑誌(特に女性誌)がウェブ媒体に移行してもなお、公式WebサイトやYouTubeアカウントでは”What’s in my bag?”を特集した記事や動画コンテンツが投稿され続けています。

参考記事:https://www.youtube.com/playlist?list=PLHlfmUA9UkXboTP1VQSiVafeE1TywnEM8

https://ginzamag.com/categories/beauty/432257

https://www.elle.com/jp/whats-in-her-bag/

コンテンツの性質の変化

”What’s in my bag?”は、現在も変わらず人気なコンテンツですが、最近は性質が少し変わったように感じます。

バッグの中身が持ち主の人となりを表すように消費者から捉えられることを逆手に取り、著名人達は”What’s in my bag?”のコンテンツを自身のブランディングの場として用いるようになったのです。自分自身をどう見せたいかによって、バッグの中身を意図的に選択したり、自分のバッグの中身に興味を持つ人々の存在を見越して、商品PRとしても用いるようになりました。

このようにして、”What's in my bag?”のコンテンツは徐々に、エンタメから個人や商品のPR的な役割を持つように変化していきました。そして、消費者達もその傾向に徐々に気づき始めています。例えば、ヒラリークリントンがバッグの中に辛いソースを携帯していると明かした時、一部の人種に対して、親しみやすさをアピールするための意図的な施策だという声も上がりました。

参考記事:https://theweek.com/speedreads/619127/clinton-stirs-anger-by-claiming-carries-hot-sauce-bag-like-beyonc

コンテンツ投稿者の変化

このように、公式や著名人から投稿される”What's in my bag”のコンテンツは広告感が増してきており、一部の視聴者は離れ始めています。

しかし、バッグの中身を知りたいという視聴者からの需要は変わっておらず、コンテンツの人気は保ちつつ、投稿者がインフルエンサーへと移っています。現在、マイクロインフルエンサーや顔も明らかにしていないような一般人(会社員、学生等)の”What's in my bag?”コンテンツも徐々に人気を高めています。

SNSやオンライン技術の普及により、誰もが簡単にコンテンツを作成し、発信できるようになった今、様々なSNSで”What's in my bag?”の投稿が増えています。例えば、TikTokでは現時点で#whatsinmybagのコンテンツが20万本以上投稿されています。

視聴者の心理の変化も

では視聴者は、インフルエンサーや一般人の”What’s in my bag?”コンテンツをどういった心理で見ているのでしょうか。

昨今では、SNSやオンライン技術の普及や人々のライフスタイルや価値観の変容に伴い、自分の価値観に近く、より身近で親しみやすい人がフォロワーを獲得するようになってきています。

従来のセレブリティのような、手の届かない憧れよりも、自分の普段のライフスタイルが少しだけアップグレードされるようなコンテンツを共有してくれるマイクロインフルエンサーのアカウントへ人気が集まっているのです。ダイレクトメッセージを送れば直接繋がることができるかもしれない、自分の投稿を覗きにきているかもしれないという距離感も、魅力の一つです。

公式や著名人の発信の信憑性の低下だけでなく、インフルエンサーへの憧れのシフトチェンジや親しみやすさから、等身大で身近なインフルエンサーやYouTuberのライフスタイルをマネする文化が根付き始めています。

”What's in my bag?”のコンテンツも、大手の雑誌などを経由せず個人のアカウントやチャンネルで投稿をするため、視聴者から見て信頼度が増します。少し背を伸ばしたら手の届くのではないかという淡い期待感が、所有物ですらも参考にして自分の生活に取り入れたいという彼らのファンの思いをさらに高めるのではないかと考えます。

また会社員や学生は、自分と同じような生活環境にある人のバッグの中身を覗くことで、生活の知恵やお得情報、便利グッズなどを見つけられるのではないかという興味や、共感などが”What's in my bag?”コンテンツが人気を維持し続けている理由になっているのではないかと感じます。

投稿者のセンスに共感し、好きなバイヤーがキュレーションをしているセレクトショップチェックするような感覚でフォローしている人も多いのではないかと考えられます。

まとめ

今回は若者に人気の”What's in my bag?”の流行要因を探ってみました。 バックの中身を見るのは、そこに投影されるその人の人となりや生活を覗くことができるようでワクワクしますよね。

エンタメとして成長したコンテンツがPRとしての側面を強く持ち始め、ソーシャルメディア環境も細分化が進み、より身近なインフルエンサーの発信が伸びるようになりました。 ”What's in my bag?”は、手を伸ばしたら届きそうな存在への憧れ、自分と社会の距離感などを確認するツールにもなりつつあります。

そして、根本にある他人のバッグ鞄への興味は、若者の中に変わらず存在すると思います。これまで”What's in my bag”のコンテンツを見たことない人でも、他人の生活習慣や趣味嗜好、持ち歩いているものに興味を持ったことはあるはずです。

次の記事では、実際の若者のカバン事情を明らかにしていきます。

参考記事:

https://www.racked.com/2016/11/7/13512530/purses-medicine-cabinets-performance-us-weekly