若年層(Z世代)の「エモ消費」が増加中?!「エモ消費」とは何か、なぜ現代の若年層は「エモ消費」を行うのか、など事例と共に徹底解説
高度成長期以降、人々が「何に価値を感じるか」が刻々と変化しています。たくさん高級品を持っていればいいのか、旅行やイベントに行くことがいいのか、SNSでリアクションを貰えることをするのがいいのか、など、その時代において重きを置かれている価値が移り変わっていることは想像に容易いでしょう。
人々は価値を感じるものに対して消費行動を起こすものです。移り変わる「消費行動」に対して敏感になり、消費者が何を求めているかを把握することは、マーケティングをするにあたってとても重要なことなのです。
この記事では、これからを形作っていくと言われている「エモ消費」について紹介します。若年層が好む「エモ消費」に対して理解を深めていきましょう。
モノ→コト→トキ→エモ?!
今までの消費行動は以下の三つを変遷してきました。
①モノ消費
家電品や車、衣類、アクセサリーなどのハード面においての消費を中心とした消費スタイル。まず生活必需品から買い揃えることから始まり、より良い製品を買い足したり買い替えたりして消費が伸びていきます。
②コト消費
モノ消費が高級品やブランド品など、ステータスや高級志向を満足させる精神的な満足を得るための消費に変わったものが「コト消費」です。旅行や習い事などのソフト面における消費が中心です。さらに、これをSNSに投稿しリアクションをもらうことで得る精神的満足感が「コト消費」をさらに伸ばします。
③トキ消費
やがて体験が気軽に共有できるツールが発達したことで、他人の体験を簡単に擬似体験できるようになり、自ら「コト消費」を行う意欲が減退していきました。そこで誕生したのが「今そこでしかできない体験」を求める「トキ消費」です。フェスやハロウィン、ファンミーティングやオンラインサロンなどの「同じ趣味嗜好を持つ人たちが集まる場」で得られる体験を得るための消費活動です。
↓詳しくは以前SORENAで「トキ消費」について紹介した記事をチェック 2021年はトキ消費が急増!?新しい生活様式の中で広がる、モノ消費・コト消費に続く消費とは。|SORENA|若年層マーケティング専門メディアこの三つに続いて新たに注目されているのが「エモ消費」です。
エモ消費とは?
若年層に広く親しまれている「エモい」というスラングを耳にしたことがある人も多いのではないのでしょうか。
この「エモ」は「エモーショナル(emotional=感情的)」が語源だと言われていて、「エモい」は「ロジカルに説明できないが満たされる」、砕けた言い方をすれば「なんかいい」という意味を持ちます。
その「精神的な満足感」に着目したのが「エモ消費」です。今まで目的とされていた「モノ」「コト」が手段と化し、「エモい」という感情で心を満たすという精神価値を求める消費行動がこれから増えてくると言われています。
「エモ消費」は手間暇をかけお金もかける、決してコストパフォーマンスが良い消費行動ではありません。そのため、自分のためにお金を使うことが多い若年層や独身者がターゲットとして挙げられています。
以下に若年層の「エモ消費」に着目した事例を紹介します。
若年層は実際にどんな「エモ消費」をしている?
〈不便な物・作り込まれていない物〉
便利なもので溢れている世の中であえて不便な手段を選ぶことに対する特別感や、時間をかける過程で得られる思い出や充実感に惹かれる若年層が増えています。
・フィルムカメラ
スマホで簡単に撮れるようなクリアな写真は取れず、現像する手間もかかるフィルムカメラですが、フィルムカメラで撮った写真ならではの味が注目されています。
https://www.japandesign.ne.jp/interview/utsurundesu/
・青春18きっぷ
新幹線で一瞬で移動できてしまう時代に、あえて時間をかけた「鈍行」をすることを促すの青春18きっぷは「エモ消費」の時代にぴったりと言えます。
https://thunss.com/2018/08/09/18kippu_kihon/
・シャボン玉、手持ち花火、夕日、花畑、など
一昔のインスタ映えで用いられた都心のお洒落な壁や建物などの人工物ではなく、綺麗な夕日の見れる場所や花畑などの自然を連想させてくれるような場所に出向いたり、公園でシャボン玉や手持ち花火をしたり、自然を連想するような「作り込まれていない」場所や物が若年層を惹きつけています。
https://mery.jp/1052513
https://mery.jp/1092895
ゆっくり目的地まで行き、綺麗な景気を見て、フィルムカメラで写真を撮って、後日現像をしてInstagramにアップする、といった一連の流れが「エモい」と感じます。
〈一点物〉
一点物という「自分の思いがこもった特別な物」を所持し、精神的満足感を得ることも「エモ消費」と言えます。
・スマホケース
自分でデザインをカスタマイズしたり、クリアケースの中に好きなステッカーや写真を入れることでオリジナリティを出すことが若年層の中で流行しています。
https://pin.it/1Sucn0Y
https://hameefun.jp/column/5199
https://www.qoo10.jp/g/782989006
・古着
人と被らないファッションができるお洒落さと特別感に惹かれる若年層が増えており、買い物に行く際は原宿や下北沢の古着屋さんを巡るコースも定番化しています。
https://folk-media.com/3307
〈推しに貢献できる物〉
自分が応援しているアーティストやアイドルなどの「推し」に対して貢献をすることで精神的満足感を得る行為も若年層に見られる「エモ消費」の一つです。
・CD複数枚購入
握手会に参加したり狙いのランダムの特典をゲットしたりするためにCDを複数枚購入することもあります。CDを購入することで売り上げに貢献しているという精神的満足感を得られるため、特典のためになら罪悪感なくCDをたくさん購入してしまうのも「エモ消費」です。
https://cancam.jp/archives/118129
・推しの誕生日祝い/グッズ制作
CD複数枚購入と違って推しに直接お金を注ぎ込むわけではありませんが、手の込んだ誕生日祝いやグッズを制作し、それをSNSにアップして推しへの愛を伝え、周りにアピールすることで精神的満足感を得る「エモ消費」です。
https://oshipedia.com/manual-of-japanese-idol-birthday-party/
これらの活動を支えるためにさまざまな応援グッズが発売されており、300円均一ショップである「3COINS」では「ヲタ活応援コーナー」があります。これは若年層の「エモ消費」に着目した商品展開であると言えます。
https://www.jalan.net/news/article/326015/
まとめ
「エモ消費」についての理解が深まりましたか?
消費行動が移り変わっていく中、効率良く生きようと思えば生きられる時代だからこそ、あえて手間暇やお金がかかってしまうもの、古いものや不便なもの、などの価値が再認識されています。自分の精神的な満足、すなわち「エモ」を満たすために働きかけることが、今後若年層の人気を集めるポイントとなってきます。
今一度若年層が行う「エモ消費」を参考に、マーケティング戦略を考えてみてはどうでしょうか。
参考
独身を幸せにする「エモい」という感情の正体 | ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
モノ消費から、コト消費。 そしてトキ消費へ