若年層(Z世代)にはYouTubeやテレビの「倍速視聴」が定番化!? タイパ重視の若年層が倍速視聴する動画としない動画の違いとは?
沢山の映像に囲まれ生活している私たちは、「何を見る」「何を見ない」かを日々取捨選択することになります。自分に今必要な動画を必要なタイミングで選び抜き、全てを見ることは至難の技です。
新型コロナウィルスの流行もあり、動画でのコミュニケーションも増えつつある中、マーケターとして注目しなければならないのが「倍速視聴」ではないでしょうか?
「倍速視聴」とは?
「倍速視聴」とは、テレビや映画、ネット配信など、映像の元々の速度を変えて再生・視聴することを指し、1.2倍や1.5倍など、自分の好みの速度に上げて設定する場合に対して使う場合が多いです。(0.75倍や0.5倍など速度を下げる場合に対しても倍速再生(倍速視聴)と呼ぶことがあります。)
近年、ネットの動画配信サービスやTVの見逃し配信サイトでも再生速度を視聴者が自由に設定出来る機能を提供しているケースも多くみられます。それほど私たちの生活に「倍速視聴」が馴染んできており、必要としている人が増えてきているのです。
『倍速再生(1.2倍や1.5倍など再生速度を上げての再生)で動画を視聴したことがありますか?』という質問に対し、「倍速で視聴したことがある」と答えた人が76.6%でした。
(参考:動画の倍速再生、企業の教育・研修や情報共有での利用状況)
倍速視聴で動画を視聴したことがある人の中でも、だいたい倍速で視聴している人の割合が最も多く、倍速で動画を見る人の割合が増えつつあることが分かります。
次に年代別で見てみましょう。
(参考:動画の倍速再生、企業の教育・研修や情報共有での利用状況)
いつも倍速で視聴している割合は20代が一番高い結果になっています。
上記の調査結果から、倍速視聴を好む人の割合として若年層の利用率が増えつつあることが分かります。
なぜここまで若年層の間で倍速視聴が主流となっているのでしょうか。また、どのように倍速視聴を好む若年層のインサイトを利用し、マーケティング施策に繋げることが出来るのでしょうか。
この記事では、若年層が倍速視聴を好んで利用する理由と、今後の映像マーケティングとしてどのように現状と向き合い、若年層に響くものが発信出来るかについて解説していきます。
なぜ「倍速視聴」なのか
「倍速視聴」がなぜ若年層の間で好まれるのでしょうか?また、倍速視聴することが彼らにとってどのような利益を生むのでしょうか?
倍速視聴で動画を視聴する理由を調査したこちらのグラフでは、理由として「時間短縮」が一番多く挙げられていました。次いで「おおまかに内容を理解したい (54.1%)」「再生速度を上げても内容を理解できる (41.2%)」という結果です。
(参考:動画の倍速再生、企業の教育・研修や情報共有での利用状況)
「時間短縮」が選ばれる大きな理由としては、若年層を中心に「タイムパフォーマンス=タイパ」を重要視する人が増えていることが理由として考えられます。
近年、溢れかえるほどあるコンテンツの中から自分が好きなもの、見なければならないもの、見るべきではないものを取捨選択していく必要があり、LINEやInstagramなどのSNSもチェックしなければならず、時間がいくらあっても足りません。でも、最新の話題にも取り残されたくはない。このような状況からタイパを重要視する人が増加しているのでしょう。
若年層にとって時間の節約をしながら、いかに沢山の動画を見ることが出来るか、その場で瞬時に欲しい情報が手に入れられるかが重要であることが分かります。
倍速視聴「する」動画
そんなタイパを意識した若年層が進んで倍速視聴する動画はどのようなものなのでしょうか?
以下の調査結果では、20代女性は「YouTuberの企画動画(43.8%)」が他世代に比べて高い傾向となっています。
(参考:動画の倍速視聴に関する調査(2021年))
倍速視聴のメリットは自分の好きな速度で、時間の自由度をあげることが出来ることです。
20代女性に多い「YouTube動画」は友人や同僚などの間で話題になりやすく、手早く内容を理解したいため倍速視聴にいたる傾向が高いと考えられます。
これに続き「ドラマ」や「バライティ」の数字が高いのも、上記の理由からであることが考えられるでしょう。
このような流れを受け、ライブストリーミング形式インターネットTVプラットフォームAbemaでは、「アベマ倍速ニュース」という番組が出来、最近ではTBSの『サンデー・ジャポン』で「1.5倍速 “タイパ” ニュース」という企画が始まりました。
ニュース番組の注目する部分だけを見たい、全体把握のタイパを意識し倍速視聴したいといった声が多いのでしょう。地上波テレビも変わりつつあるようです。
以上のように、タイパを考えなるべく時間をかけて見なくても成立し、情報を得ることに特化したものが優先的に選ばれているようです。
倍速視聴「しない」動画
では若年層が倍速視聴しない、したくない動画はどのようなものが多いのでしょうか?
倍速視聴しないメリットは、作り手の意図したテンポで見ることが出来る、映像のセリフや内容を理解しながら見進めることが出来ることでしょう。
映画や好きなアーティストやタレントの出演動画など好きなもの、ことに関して時間をかけることは厭わない人が多いようです。他人軸で見なければいけない映像ではなく、自分が好きな映像は倍速視聴せず時間をかけて楽しむ傾向にあります。
(参考:JKは倍速視聴で「押さえておく」。でも推しは高画質で愛でたい)
また、リアルタイムで体験として見ることの出来る動画も倍速視聴されない映像でしょう。
例えばライブの中継映像やトークセッション、オリンピックなど一体感を持って見ることの出来る映像は倍速視聴されずリアルタイムで見られることが多い傾向です。
体験にお金をかけたい若年層ならではの選択と言えるのではないでしょうか?
(参考:脳科学から考える「動画の倍速視聴」の注意点と正しい使い方
このような、その時、その場所で行われる出来事に参加することで、自らも盛り上がりの一部になっていく「トキ消費」を大事にする若年層にとって、倍速視聴をしない選択をすることも大事になるのかもしれません。
倍速視聴を「意識」する
これまでの内容から、発信したい映像の内容に応じて企業側が意識するべきことが変わってくるでしょう。
意識するべきは倍速視聴をする場合、しない場合のメリットです。
【倍速視聴するメリット】
・時間短縮出来る
・たくさんの情報を得ることが出来る
・効率よく見ることが出来る
→情報を得るためには効率が良い方法
=「情報の認知、共有重視」
【倍速視聴しないメリット】
・躍動感を一緒に味わうことが出来る(「トキ消費」)
・細かい情報を得ることが出来る
・意図されている情報量を理解しながら見ることが出来る
→動画を観賞するのに向く方法
=「時間の認知、共有重視」
上記のように各特徴を掴み意識することで、若年層へのマーケティング施策に繋げることが出来るのではないでしょうか。
まとめ
若年層を中心に広がっている「倍速視聴」に関しての理解は深まりましたでしょうか? 若年層は動画を「倍速視聴」でばかり映像を見ているのではなく、映像の種類によって「倍速視聴」を「する」か「しない」か使い分けています。
なぜその映像が「倍速視聴」されるのかを意識し、
倍速視聴をする=「情報の認知、共有重視」
倍速視聴をしない=「時間の認知、共有重視」
上記を軸に施策制作に取り組むことで、若年層の生活に取り込まれる映像が出来るのではないでしょうか?