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【バズマーケティング】バズコンテンツの作り方|事例「鬼滅の刃」「100日後に死ぬワニ」はなぜヒットしたのか

MARKETING 2020.07.28

日々たくさんの情報が生まれ、流されていく現代。人々の注目を集める「バズ」は、マーケターにとって見逃せない存在になりました。

偶然から生まれるバズもありますが、なかには戦略的に作り出されたものもあるでしょう。
バズコンテンツがどのようにして生まれたのか、その過程を辿れば「バズ作り」のヒントを得られるかもしれません。

2020年上半期にSNSで話題をさらった2つのコンテンツ「鬼滅の刃」と「100日後に死ぬワニ」を例に、バズの作られ方を考察します。

「鬼滅の刃」「100日後に死ぬワニ」の概要

「鬼滅の刃」概要

鬼に突然家族を殺された主人公が、鬼になった妹と共に、家族を殺した鬼を探して妹を人間に戻す方法を探るというストーリーの漫画です。
2016年から2020年の間、「週刊少年ジャンプ」にて連載されていました。

2019年にテレビアニメも放映され、2020年6月には単行本の発行部数が8000万部を突破するという人気ぶりでした。
2020年10月に、映画の公開も予定されています。

「100日後に死ぬワニ」概要

漫画家・イラストレーターのきくちゆうきさんによる日めくり4コマ漫画です。
100日目に死んでしまう「ワニくん」の、たわいもない日常が描かれています。

2019年12月12日から2020年3月20日までの100日間、作者のTwitterアカウントにて毎日1話ずつ公開されました。
最終話が投稿された3月20日には、Twitterのトレンドワード世界1位になっています。

最終話の公開後、この企画に付随する大型企画が多数あることが明かされ、賛否両論が巻き起こりました。
しかし、その話題が過ぎ去った今なお、「100日後に死ぬワニ」は知名度の高いキャラクターとして定着しつつあります。

バズはいつ生まれるのか:PV・エンゲージメントと話題拡散の関係

「鬼滅の刃」「100日後に死ぬワニ」がそれぞれいつから・なぜバズり始めたのか、PVとエンゲージメントの推移から考えます。

「鬼滅の刃」ーアニメ放送はヒットの決め手ではない

「鬼滅の刃」の検索数の推移をみてみましょう。

検索ボリュームが徐々に伸び始めたのは、アニメ放送が開始された2019年4月です。
「鬼滅の刃」のテレビアニメは作画が美しいことでも有名です。原作漫画の面白さアニメならではの良さが加わったことも、ヒットのきっかけだといえるでしょう。

LiSAが歌う、テレビアニメの主題歌「紅蓮華」も大きな役割を果たしました。
「紅蓮華」は同年、様々な賞を受賞し、カラオケのランキングでも常に上位に入る人気曲となったのです。
また、LiSAは2019年の紅白歌合戦にも出場し、「紅蓮華」を披露しています。

このグラフで注目すべきは、検索ボリュームがアニメ放送終了後も伸び続けていることです。

これには、漫画単行本が供給不足になったことが関係しています。
2019年秋以降、「鬼滅の刃」の単行本が軒並み売り切れになりました。丁度、検索ボリュームが飛躍的に増加した時期と重なります。

SNSが普及した今、「手に入らない!」というファンの声や書店の様子が可視化され、飢餓感がかつてないスピードで共有されるようになりました。
「鬼滅」の供給不足はおそらく偶然起こったものですが、こうした「枯渇感」「レア感」を作り出すことも、バズのヒントだといえるかもしれません。

アニメ終了後にPVが増えたもう一つの理由としては、動画配信サービスを有効活用したことが挙げられます。
これについては後述します。

「100日後に死ぬワニ」ーウィンザー効果・バンドワゴン効果が功を奏す

これは、「100日後に死ぬワニ」の投稿ツイートについた「RT(リツイート)」と「いいね」数の推移をグラフにしたものです。
薄緑が「いいね」、深緑が「RT」の数を表しています。

ここで注目したいのが、最終日とその前日に、爆発的にエンゲージメント数が増えていることです。
「100日後に死ぬワニ」が真に「バズった」のは、99日目からだといってもよいでしょう。

これには「口コミが口コミを呼ぶ心理」が働いたと考えられます。
ウィンザー効果」と呼ばれる、「第三者が発信する情報のほうが信頼しやすい」という心理効果が上手く働いたのでしょう。
加えて、「バンドワゴン効果」という「多くの人が支持しているものに価値を感じる」心理効果も関係していると思われます。

要するに、「他の人がいいと言っているから、このコンテンツは面白いに違いない」「みんなが注目しているものが気になる」という心理が働き、RTがRTを、いいねがいいねを呼ぶ状態が作られたのです。

また、「連載」でありながら「必ず100話で完結する」形式になっていたことが、読者に飽きられなかった理由です。

漫画雑誌では人気作品の連載を引き延ばしたり、不人気な作品は打ち切ったりすることもあるため、連載漫画はいつ完結するか分かりません。
この形式は、途中で脱落者を生む恐れがあります。

終了時期が定まっていないため、読者は途中で離脱すると「今どうなっているか分からないから戻れない」状態に陥るからです。

しかし「100日後に死ぬワニ」は、100話目がクライマックスであることが自明なので、一時離脱していた読者もそこに合わせて戻ってくることができます。

99日目と100日目にエンゲージメント数が増えたのも、離脱した読者が戻ってきた結果ではないでしょうか。

バズを生むには、プラットフォーム選びが重要

ここからは、「鬼滅の刃」「100日後に死ぬワニ」両バズコンテンツと関係の深い「プラットフォーム選び」について説明します。

共感から拡散を生むSNS

「100日後に死ぬワニ」は、「100日後に死ぬ」というメッセージ性やそこに生まれるドラマが共感を呼び、話題になりました。

これは、拡散力が高く、個人の自由なコメントが付けやすいTwitterというプラットフォームに投稿されたことで、効果を発揮したのです。

前述の通り、もし漫画雑誌に連載されていたら脱落者が生まれたかもしれません。
口コミが口コミを呼ぶという拡散方法も、Twitterが最も得意とする分野です。

多メディアの活用

「100日後に死ぬワニ」は、Twitterという適切なプラットフォームを1つ選ぶことで成功を収めました。
反対に、「鬼滅の刃」は多メディアの活用が成功につながった例だといえます。

前述のように、「脱落しても戻ってこられる」状況作りは、バズマーケティングにおいて重要です。
「鬼滅の刃」はこれを、VOD(動画配信サービス)の活用で実現しました。

NetflixやAmazonプライムなどの配信サービスを使えば、タイムラグがあるユーザーも後追いで最新話まで全話を観ることができます。 アニメ中盤の盛り上がりが呼んだ新規視聴者は、配信サービスでアニメを追って、その後単行本も購入するようになったのです。

また、配信を早期に始めたことも成功の鍵でした。
これは、イノベーター理論を基に考えると分かりやすいです。

出典:https://boxil.jp/mag/a2991/

「鬼滅の刃」はアニメ放送前に、すでに単行本を累計350万部発行したほどの人気作品でした。
イノベーター理論でいう、「アーリーアダプター」のどこかにいたと考えられます。

それがアニメ放送によって、どこかの段階でキャズムを超えて「アーリーマジョリティ」の層に踏み込んだのです。
近年のヒット漫画では「キングダム」なども、テレビ番組で紹介されたことによってこの「キャズム」を超えたとされています。

キャズムを超えただけではただの人気作品ですが、早い段階でVOD配信に踏み切った「鬼滅の刃」は、テレビだけでは取りきれない層にも、いち早く食指を伸ばすことができました。
テレビとネットの両方を使って、同時に口コミを作ることができたのです。

さらに、VODの活用は、周りが導入するのを見てから動く「レイトマジョリティ」「ラガード」にもアニメを視聴できる環境を与えました。
こうして、「鬼滅の刃」はバズコンテンツになることができたのです。

まとめ

ここまで説明したことを大まかにまとめるとこうなります。

・「レア感」がバズを生むこともある
・ウィンザー効果、バンドワゴン効果を利用すべし
・長編コンテンツの場合、脱落者を出さない工夫が必要
・適切なプラットフォームを選ぶべし

コンテンツにはそれぞれ適したマーケティング方法があり、「バズへの近道」はありません。
この記事に書いたものもあくまで一例にすぎませんが、今後マーケティング施策を考える際の参考になれば幸いです。