YouTubeなどの動画コンテンツの「切り抜き」が企業PRに繋がる?!若年層(Z世代)の動画編集文化とその応用の可能性を徹底解説!!
最近では少しずつ若年層のSNS投稿に新たな傾向が見られていることをご存知でしょうか。すでにYouTuberなどの配信者はこの傾向を利用して、自作コンテンツを広めるようになっています。
この記事では動画コンテンツが一般ユーザーによって「切り抜かれる」「再編集(リミックス)される」などの方法で世に拡散されていく流れと、その企業PRへの応用可能性を解説していきます。
「切り抜き」とは?発祥と変遷
「切り抜き」とは、配信者の配信の一部を切り抜いたコンテンツのことです。元々動画配信サービスが登場した頃から存在はしていましたが、最近話題にあがっています。
元々切り抜きは他人の動画の一部分をアップするという無断転載行為でした。しかし、拡散力がある切り抜きに目をつけた2ちゃんねるの創設者「ひろゆき」氏を発端に「切り抜き公認化」という流れができ始め、爆発的に「切り抜き文化」が広まりました。
公認された切り抜きチャンネルは、収益を得る代わりに一定の割合を元の配信者に納めなければなりません。また、公認というプロセスを経て収益を分け合うことはせず、無断で切り抜きOKと公言だけしている配信者も多くいます
他人のコンテンツで収益を得る、もしくは収益がなくともコンテンツの拡散に貢献できる「切り抜きチャンネル」と、自分のコンテンツを拡散してもらい、場合によっては追加収益を得ることができる「配信者」にWIN-WINの関係を築くことのメリットを、ひろゆき氏を発端に様々な配信者が気づき、取り入れる流れとなったのです。
(参考:切り抜き動画がyoutubeで最強のジャンルになりつつある)
大手YouTuber事務所であるUUUMが切り抜き文化を公式に取り入れ始めたことも話題となりました。
UUUM専属クリエイターの一部に対して「二次創作ライセンス許諾プログラム」を開始し、一部切り抜きチャンネル・及びクリエイターのコンテンツに新たに付加価値をつけた創作物を投稿しているチャンネルに対して、公認の契約を交わすことを2021年7月29日に発表しました。そして、チャンネル登録者数613万人(2021/11/5時点)を誇る「東海オンエア」が筆頭となってこのプログラムを始動させました。
(参考:UUUM専属クリエイターのYouTubeコンテンツに関する「二次創作ライセンス許諾プログラム」の取り組みに関するお知らせ)
切り抜きの魅力とは?
切り抜きが拡散されることで配信者にとっても利益があるようなシステムが作られつつあることは前述の通りですが、それを視聴する者は何に魅力を感じているのでしょうか。
まずは、「時間不足」が挙げられます。限られた時間しか動画視聴に割けない人が、コンテンツのポイントとなる部分をかいつまんで視聴することができるのが切り抜きの最大の魅力と言っても過言でありません。
また、短く切り抜かれた動画だからこそ、普段コンテンツをフルで視聴しないようなクリエイターのものもついつい見てしまうことも挙げられます。切り抜きを見たことがきっかけで、元のコンテンツにも興味を持つこともあります。
Z世代にとって「動画編集」「切り抜き」は常識
Z世代に対して「動画編集をしたことがあるか」を問う調査では、76%が「ある」と回答をしており、馴染み深いものであることがわかります。
(参考:「動画編集は当たり前」「欲しいカメラは一眼とチェキ」イマドキZ世代のカメラ事情|)
また、「切り抜き動画を作ったことがあるか」と問う調査に対しては25.7%が「ある」と回答しています。投稿する媒体はTikTokが53.6%と最も人気であることがわかります。
(参考:Z世代の1/4がYouTubeで切り抜き動画を作成 5割がTikTokにアップ)
切り抜きだけではない!ファンに拡散される再編集動画
切り抜きは動画のワンシーンを「切り抜いた」だけのものを指しますが、それ以上に手の込んだものもYouTubeやTikTokでたくさん投稿されています。
例えば「〇〇集」という複数動画から抽出したワンシーンを編集してまとめたもの、「歌詞動画」という曲に合わせて動画のシーンをまとめたものなど、ファンがコンテンツを再編集して投稿しています。
ファンが付加価値をつけて投稿したこのような動画は、元のコンテンツの新たな魅力を引き出すことができ、少し切り抜き動画よりは制作に手間がかかるものの、多くの人に愛されています。
YouTuberは既に切り抜きをうまく利用している?!
YouTuberは特にこの切り抜き文化を応援することに積極的になっています。
事務所UUUMを通して一部YouTube上切り抜きチャンネルを「公認化」し、収益を分配することを決めた「東海オンエア」の事例だけではなく、インセンティブを与えることで「切り抜き」を視聴者に拡散してもらい、TikTokやYouTubeの切り抜きから自らのコンテンツへの流入を図った事例がたくさんあります。今回はそのうち二つを紹介します。
コムドット
チャンネル登録者270万人のYouTuberです。該当のハッシュタグをつけて投稿し、いいね数を多く獲得した投稿主にはメンバーの私物がプレゼントされるというキャンペーンを毎月行うことで、TikTokでの動画の拡散を促進している事例です。
「#コムドット切り抜き」は累計18億回再生、「#コムドット歌詞動画」は累計5億回再生と、TikTokで大反響を呼んでいます。
48-フォーエイト
チャンネル登録者169万人のYouTuberです。該当のハッシュタグをつけて投稿し、いいね数を多く獲得した投稿主にはメンバーが選んだ豪華商品がプレゼントされるというキャンペーンを行うことで、TikTokでの動画の拡散を促進している事例です。
(参考:【超豪華プレゼント企画】いつも、応援してくれている皆様へ!!)
「#48人生ゲームプレゼント」は累計3億回再生と、TikTokで大反響を呼んでいます。
このようにYouTuberの中ではインセンティブを与え、TikTokで自作コンテンツが拡散されることを狙った施策を打つ人も多く出てきており、その該当するハッシュタグの累計再生数は億単位に登る事例もあります。コンテンツを切り取っての拡散が膨大な影響力を持つ可能性を持っていることがわかります。
「#48人生ゲームプレゼント」は累計3億回再生と、TikTokで大反響を呼んでいます。
このようにYouTuberの中ではインセンティブを与え、TikTokで自作コンテンツが拡散されることを狙った施策を打つ人も多く出てきており、その該当するハッシュタグの累計再生数は億単位に登る事例もあります。コンテンツを切り取っての拡散が膨大な影響力を持つ可能性を持っていることがわかります。
企業の事例
どのような企業のコンテンツなら一般ユーザーに拡散してもらいやすくなるのでしょうか。過去に公式で切り抜き等の動画を促進した事例はないものの、企業のコンテンツがSNS上で意図せぬ形で大反響を呼んだ例を参考に考察していきます。
ブックオフなのに本ねーじゃん
2019年、タレントの寺田心さんを起用し「ブックオフなのに本ねーじゃん」というフレーズが印象的なBOOK OFFのCMがSNSを中心に爆発的に拡散され、それを元ネタとしたリミックス動画を制作することが流行しました。それを受け、BOOK OFFはTikTokで公式にプロモーションを打つなど、非公式での拡散を容認した上で、さらには公式が便乗することで拡散をさらに促進しました。
(参考: https://tiktok-for-business.co.jp/archives/2534/)
ビッグマックを食べた
2020年、俳優の堺雅人さんを起用し、色々な出来事があるたびにビッグマックを食べるというマクドナルドのCMがSNSで話題を呼びました。SNS上で、CMのスクリーンショットを用いて大喜利が行われたり、リミックスした動画が制作されたりして流行した事例です。汎用性が高い素材だったので、事あるごとにネタにされやすいのが特徴でした。
「いじりがいがある」「加工・編集しがいがある」「汎用性が高い」などのポイントが見えてきました。紹介した事例は意図せず広まった事例ですが、それを意図的に企業側が創出すること、そしてインセンティブを与え拡散を促進することができれば、新たな一般ユーザーによる拡散の形としてこれから主流になっていく可能性を秘めています。
まとめ
ここまで、「切り抜き」を含む動画コンテンツの二次利用が、今後の企業PRに応用できる可能性について解説してきました。
動画の編集をしてアップするという行為は大変なような印象があり、従来SNS上での拡散を促すために必要だと言われていた「参加しやすさ」はないように感じるかもしれません。しかし、この「切り抜き」文化の流行の一因とも言える「若年層の動画編集慣れ」によって、十分に拡散が見込める状況になってきています。
YouTubeが発端で行われている、一般の人に自作コンテンツを二次利用することを許可する代わりにコンテンツを広めてもらう、という考え方は企業PRにも応用できるのではないでしょうか。
拡散してもらいやすいポイントを抑え、拡散を促進できれば、動画編集慣れしている若年層に楽しく企業のコンテンツを拡散してもらえるようになるはずです。